おすぎのシネマ言いたい放題

映画評論家おすぎが、公開映画を一刀両断!いま観るべき映画の答えは、このブログのなかにある!

プロフィール

プロフィール画像
おすぎ
1945年神奈川県生まれ。映画評論家。
テレビ、ラジオ出演のほか新聞・雑誌の執筆、講演やイベントの企画制作など多岐にわたり活動している。

最近のレビュー・記事

このブログで使用したタグ

ブックマーク

RSS1.0

クライマーズ・ハイ

おすぎ

クライマーズ・ハイ.jpg
日本映画ってベストセラーを映画化して原作を越えたっていうものは少ないでしょう。「アウト」にしても「マークスの山」にしても、あんなに読んでいる時にワクワクしていたものが、映画にすると読者の頭の中で描かれた映像と少しも一致しないものになってしまう。勿論、脚色の段階で、原作と映画とは違うものだ、という意識があっての上でのことだろうけど、観る方としてみれば失望してしまうのです。

ところが原作を面白く読んで、その映画化をした作品を見て楽しんでしまう映画が出来たのです。横山秀夫“クライマーズ・ハイ”原田眞人が監督した映画「クライマーズ・ハイ」は、映画としてもエンターテイメントとしても大変良く出来た映画です。

1985年8月12日、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落しました。この未曾有の悲劇をマスコミは総力をあげて報道しました。大手の新聞社は大勢の記者を挙げて現地に入りました。一方、地方紙を発行している新聞社はどうだったのか、を描いたのが「クライマーズ・ハイ」です。主人公の全権デスク悠木を堤真一が熱演しています(私が見た限りでは、今までの出演作とは違って演技に巾が出てきました)。悠木の片腕となる県警キャップ佐山役の堺雅人も好演しています。ひとつの会社を舞台にした群像劇でありますが、それは観る者にとっても日常であるはず。必ず、どこかで胸を打たれると思います。
-----------------------------------------------
■「クライマーズ・ハイ」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

おすぎ

インディ・ジョーンズ.jpg
「インディ・ジョーンズ」シリーズ19年振りに登場。けっこう、危ぶんでいたのです。何しろ、ハリソン・フォード、年でありますから、そう66歳なのです。

2006年の「ファイヤーウォール」では、もうヨタヨタのアクションでしたけど、別にあの作品はアクションが売りではなく、年相応、いや、ビジネスマンが仕方なく悪者相手に殴り合いをする、という設定だからモタモタ、ヨタヨタであってもいいけれど、今回は“インディ・ジョーンズ”ですよ。“腐っても鯛”ぢゃございませんか。それなりに軽快にやって欲しい、と思って当たり前。ところが、これが裏切らないのです。

ヨタヨタ感が無いと言ったら嘘だけど(鞭を倉庫の梁に巻きつけ、自分の身体を移動させようとすれば、着地出来ず、振り子状態なってしまったり…)、それなりにガンバっているとこに好感を持ててしまうのです。それに今回のキー・ワードは“クリスタル・スカル”。マヤ文明などで出土した水晶で出来た頭蓋骨。これが超能力を発揮すると言われる代物。これをめぐってインディとマットと呼ばれる若者や、ケイト・ブランシェット扮するロシア軍の工作員イリーナが入り乱れます。

果たしてロシア軍は何を狙い、イリーナは何を知っているのか。核施設がオープニングの舞台、そしてナスカ平原の彼方まで舞台は拡がります。スピルバーグはやっぱり冒険活劇が似合っています。

-----------------------------------------------
■「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


イースタン・プロミス

おすぎ

イースタン・プロミス.jpg
デヴィッド・クローネンバーグという監督は“鬼才”などと呼ばれていますが、それって今は昔の話です。「スキャナーズ」や「裸のランチ」あたりの頃は“鬼才”はホメ言葉でしたが、3年前の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で“巨匠”の雰囲気を漂わせはじめ、今回の「イースタン・プロミス」では完全に“巨匠”になりました。そして、主演のヴィゴ・モーテンセンも、「ロード・オブ・ザ・リング」で大役をこなし「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でのクローネンバーグと組んで、一皮も二皮もむけて、堂々たる実力俳優として地位を確立しました。

「イースタン・プロミス」の意味は、イギリスにおける東欧組織による人身売買契約のことをいうそうです。で、舞台はクリスマスが近い冬のロンドン。ドラッグストアーに下半身を血だらけにした女の子が入ってきて倒れる。病院で手術をうけ、女の子を出産して死んでしまう。立ち合った看護師のアンナ(ナオミ・ワッツ)は生まれてきた子のために母親の身元を調べようとする。バッグから日記が出てき、ロシア人のタチアナ14歳と判る。日記にはロシアン・レストランのカードがはさまれていて、アンナはその店を訪れる。そこで謎の男ニコライ(V.モーテンセン)と出会う。これが運命的な出会いだった…。

ロンドンの別の顔(ロシアン・マフィアの暗躍)を描いて美事社会派サスペンスになっています。

-----------------------------------------------
■「イースタン・プロミス」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


JUNO/ジュノ

おすぎ

JUNO.jpg
本年度、米アカデミー賞の脚本賞でオスカーを獲ったことが話題になっている、と書いて、何故、脚本くらいで週刊誌などが記事にしてるかということを最初に言わなくてはイケませんね。

確かに「ジュノ」の脚本は良く出来ているし、それでホメられても少しもおかしくはありませんが、脚本を書いたディアブロ・コディは、これが初の映画用脚本で、ストリップ・ダンサーを経験した、というので話題の人になったのであります。そして、「ジュノ」の内容が、16歳の高校生が興味本位から同級生の男の子とセックスをしたら妊娠してしまった、というものなのです。こんな題材を日本で映画にしたら、もう暗くてシリアスで、でも結局産んじゃったら、養子に出そうと思っていたけど愛情が芽生えて、ひとりで強く子育てに励みました的な美談にしてしまうのにきまっています。

でも、「ジュノ」は、一回は自殺も考え、堕ろそうともしますが、産む決心をして、産んだ子を里子に出そうと里親まできめて、妊娠したことを両親に打ち明けて協力を求め、秋から冬、春が来て、予定日の初夏まで、お腹を大きくして毅然と生活していくのであります。明るく、率直に、少女から自立する女性に成長していく姿は見終わって“さわやか”な気持ちにさせてくれる秀作です。必見の一本です。

-----------------------------------------------
■「JUNO/ジュノ」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ぐるりのこと。

おすぎ

ぐるりのこと。.jpg
今年度、日本映画ナンバー・1と私が決めた映画が公開されます(6月7日より)。6年振りに新作を発表したのは「ハッシュ」の橋口亮輔監督。「ぐるりのこと。」は、法廷画家を職業としたカナオと本の編集者だった妻の翔子の10年にわたる夫婦の話です。

橋口さんは、この6年の間に“鬱(うつ)”を患い、そこからの回復の体験(映画の設定として翔子がウツになることは患う前から決まっていた、といいます)をし、肉体的にも精神的にも、ツライ状態の中で撮り上げた作品です。映画の最初に翔子は妊娠していますが、お腹の子は死んでしまい、それがキッカケで“ウツ”にかかってしまいます。夫のカナオは、そんな妻と向き合いながら、裁判所で画を描いていきます。10年の月日の中で、様々な事件を絵にしていきます。その社会の動きと夫婦生活の時の流れがリンクされ、ひとつの夫婦の歴史が描かれていきます。

とにかく、これほど見ている最中に“夫婦”のやさしさが心に浸みこんだ映画は今までなかった。私はゲイだから、夫婦というものを頭では判っていても実感として感じたことはありませんでした。それが、この映画で「もしかしたら夫婦っていうものの何センチかが判った」心境になりました。夫役のリリー・フランキーさんがなんと美事な演技を見せてくれることか。必見の一本です。

-----------------------------------------------
■「ぐるりのこと。」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”

おすぎ

ナルニア2.jpg

「ナルニア国物語/第1章“ライオンと魔女”」はハッキリ言って“子供向け”でした。とは言っても“アスラン(ライオン)”の存在がケッコウ楽しめたのと、CGやVFXなどの進化がこの手のファンタジーには不可欠であると、まざまざと思わせてくれました。

今公開中の「ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”」は、“つまらなかった”と言う人もいますが、私はケッコウ楽しく見ました。前作より1300年後のナルニア国はテルマール人という人間によって侵略され、植物も動物も、ミノタウロスもドワーフも、多くの者は殺され、わずかに残った者たちは森深く隠れて暮らしていた。テルマール王国の正当な世継カスピアン王子は、伯父ミラースに実権を握られ追われる身となってしまった。追っ手にかこまれた王子は、最後の手段として博士がくれたスーザン女王の角笛を吹いた。その角笛の音はロンドンの地下鉄構内にいたペベンシー4兄妹(ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシー)をナルニア国へ戻すことに…。

この第2章では子供たちのグローイング・アップがメインに描かれます。特にピーターとスーザンの成長はめざましく、宣伝で“カスピアン王子”と謳っていますが、芯はこの兄妹たちのストーリーといっていいでしょう。CG、VFXも前作よりパワー・アップして、特に後半は楽しめました。

-----------------------------------------------
■「ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


アウェイ・フロム・ハー/君を想う

おすぎ

アウェイ・フロム・ハー.jpg

アルツハイマーを題材にした映画は「アイリス」などの良質なものがすでにありますが、「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」も、素晴らしく良く出来た映画です。驚くのは「死ぬまでにしたい10のこと」「あなたになら言える秘密のこと」の主演女優サラ・ポーリーが脚本、監督をしたことです。師匠のアトム・エゴヤンは製作総指揮という立場で、この映画に参加しています。

結婚して44年になるグラントとフィオーナは仲の良い、知的で、互いを深く愛している夫婦だった。そんな夫婦に不都合なことが訪れる。妻のフィオーナにアルツハイマー型認知症の影が忍び寄っていたのです。ある日の夕方、ひとりでクロスカントリーに出かけたフィオーナは自分がどこにいるのか判らなくなります。夜になってグラントが捜しに出た時、道端で途方に暮れていた妻を見つけました。病気を無視出来なくなり老人介護施設に入ることを決意したフィオーナは、夫の反対も聞かず施設に向かった…。

どんなに深く愛し合っていても、それは人生を変えてしまいます。忘れていく方もツライが、正気でいる方はもっとツライ人生になります。そのあたりを映画は冷酷なほどつき放して描きます。フィオーナ役のジュリー・クリスティーが迫心の演技を見せてくれます。品のいい、上質なものを身につけていた妻が施設の中で、すべてかまわなくなっていく様は…一見も二見も価値ある映画です。

-----------------------------------------------
■「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ランボー 最後の戦場

おすぎ

ランボー.jpg

20年振りに“ランボー”がスクリーンに戻ってきます。これが、ちょっとした衝撃なのであります。1982年、'85年、'88年のランボーは、どこか漫画チックな面がありました。紛争のある場所に出掛けて“一人軍隊(ワンマン・アーミー)”をやりますから、カリカチュアライズされたり、エンターテインメントだから許されちゃったりしました。ところが今回はスタローン自身が「“戦争”を本気で撮る」と宣言したらしい。

舞台はミャンマー。ランボーはどこにいたのか、これが“タイの北部のジャングル”なのです。毒蛇を捕えてスネークセンターに売って生計をたてたり、河に浮かべたボートで人や荷物を運んだりもしています。そんな毎日の中に、コロラド州のキリスト教支援団が訪れ、隣国ミャンマーの軍事政権が国境近くのカレン族を迫害し、虐殺しているので、彼らに医療品を届けるために道案内して欲しいと言う。初めは渋っていたランボーだが、一行の中のサラという女性に説得され出発することに…。一行をミャンマーに送って何日か後、彼らが軍隊に拉致されたという情報が入る。ランボーは傭兵部隊の男たちと支援団救出に向かうのだった…。

ストーリーはともかく、戦闘シーンのすさまじさにショックを受けました。60年映画を見てきて、かなり残酷なシーンも見ましたが、今回は思わず手で目を覆ってしまうシーンもあり、ちょっとヒキました。それでも一見の価値はあると思います。

-----------------------------------------------
■「ランボー 最後の戦場」特集ページはコチラ
-----------------------------------------------


最高の人生の見つけ方

おすぎ

最高の人生の見つけ方.jpg

ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンがプライベートにも親しくつき合っているっていうのも小さな驚きでありますが、このふたりが共演する「最高の人生の見つけ方」の息のあった演技には感嘆してしまいます。

原題は「棺おけリスト」といって、ガンにかかって余命6ヶ月と宣告された自動車整備士のカーター(M.フリーマン)が、学生時代にある教授から教わった“棺おけリスト(死ぬまでにやりたいこと、見たいものなどをリストにする)”をベッドの上に置いていると同室の大金持ちのエドワード(J・ニコルソン)が声を掛けてきて、リストのことを質問します。初めは邪険にしていましたがリストのことを話すと、エドワードも余命6ヶ月で、金は腐るほどあるからリストの中味を実行に移そうと、ふたりで病院から飛び出すことに…。

スカイダイビングからピラミッドの頂上、世界最高級のレストランの食事からアフリカでのライオン狩りなどなど、とても贅沢で楽しさに溢れた旅を見せてくれます。ただし、その根底に流れている“余命何日”という哀しさがストーリーに厚味を持たせてくれます。脚本のうまさとロブ・ライナーの演出の巧みさで笑いながら、ちょっぴり切なくなりながらも、“人生”“家族”“愛”“死”を考えさせてくれる秀作であります。ジャック・ニコルソンの存在感に圧倒されます。

----------------------------------------------
■「最高の人生の見つけ方」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ミスト

おすぎ

ミスト.jpg

スティーヴン・キング+フランク・ダラボン、といったら「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」の2大感動作のコンビであります。ダラボンは自分が長編デビューをするならキングの、この小説、というものがあったといいます。それが「霧」という恐怖小説で、今回、それがやっと実現したことになります。

「ミスト」はダラボンの製作、監督、脚本3役の映画です。別荘地に住む、映画ポスター画家のデヴィッドは前夜の嵐で庭の大木が倒れ、仕事場が破壊されたので息子のビリーを連れて町のスーパーマーケットに買物に出掛けようとして、妻のスティファニーの指摘で湖の対岸に発生した霧を見て不安に思った。スーパーマーケットに着き、知人たちと昨夜の嵐の話をしたりしていた時、突然大きな揺れがきて、停電になる。気がつくと建物はスッポリと濃い霧に包まれていた。ショッピングに来ていた人々が不安気にガラスの向うを見ている中、中年男が突びこんで来て「霧の中に何かいるっ!!」と叫んだ。霧の中にいるものの正体は…。

スーパーマーケットに閉じ込められた人間たちはパニックの末、それぞれの本性を徐々に現わしてくる。キングの描く外にいる何者も怖いが、本当に怖いのは人間である、という部分が非常にうまく描かれていて、映画に引きこまれていきます。ただ、霧の中から襲いかかってくる“もの”の全体像がなかなか掴めないイライラとラスト15分のクライマックスのあとの不条理に不快を感じる人がいるかもしれません。

----------------------------------------------
■「ミスト」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------