プロフィール
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- おすぎ
- 1945年神奈川県生まれ。映画評論家。
テレビ、ラジオ出演のほか新聞・雑誌の執筆、講演やイベントの企画制作など多岐にわたり活動している。
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- ベンジャミン・バトン 数奇な人生(02-03 10:00)
- ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー(01-27 10:00)
- 007/慰めの報酬(01-20 10:00)
- チェ 39歳 別れの手紙(01-13 10:00)
- チェ 28歳の革命(01-06 10:00)
- ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー(12-30 10:00)
- おすぎが選ぶ2008年映画ベスト10(12-25 10:13)
- ミラーズ(12-23 10:00)
- 永遠のこどもたち(12-16 10:00)
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「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」は映画史初の“若返り”ものであります。それをブラッド・ピットが演じる、という夢のような映画です。私が初めてブラピに会ったのは「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の時でした。少年のような身体つきで、抱きつくと石鹸の香りがしました。そのくらい若かったのです。あの時のブラピがスクリーンの中にいたのです。それだけで充分、満足でした。
若く、しなやかで美しいブラピの前に、年老いて、精彩の無いブラピも見られます。80歳で生まれてきて(赤ちゃんの顔が80歳なのです)、年を老るごとに若くなっていくベンジャミンの一生を彼の妻だったデイジーの回想で見せていきます。ということはケイト・ブランシェットも冒頭から老けてベッドに横たわっているのであります。「逆も、また真なり」という言葉を思い出してしまうくらい、年寄りで生まれ、子供で死んでいく、どちらにしろ、生まれる時も死ぬ時も“何も知らない状態”なのです。これは目から鱗でした。そうなんだ、どっちにしろ人間というものは、そういうものなのだ、と当り前のことを気づかせてくれたのです。人間の生、死、愛を今さらながら考えさせてくれました。デヴィッド・フィンチャーの語り口も、いい様のないくらいうまく、映像も、美術も、衣装も、音楽も文句なく美しく、不思議な、不思議な体験をさせてもらいました。
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■「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」劇場・作品情報はコチラ
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今年64歳ともなると高校生を主人公にした映画はシンドイのであります。ディズニーチャンネルで一大ブームを起した「ハイスクール・ミュージカル」は、ストーリー的には確かにお子チャマ的ではあります。それでもムービーという別格が製作されるには理由があったのです。
「ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」のオープニングはイースト高校のバスケット部“ワイルドキャッツ”の試合から始まります。“大切なのはバスケット”のナンバーに乗せて、選手、観客、チアガールたち、それも味方も敵も、全ての高校生が歌い、ステップを踏み、試合をしていきます。
なんと華麗で派手な出だしでしょう。このシーンと、ラストの卒業式からそのあとのプロムの群舞は、もう美事と拍手を送るよりしょがないのであります。ストーリーはバスケの花形選手のトロイと恋人のガブリエルが卒業の年、お互い通う大学の距離が1600キロあって、そう頻繁に会えない、さてどうなるか、というのと、トロイのクラスが恒例のスプリング・ミュージカルのオーディションを受け、この舞台がジュリアード奨学生の選考会となる、それに何故かトロイの名前が…。さて結末は…という、たあい無いものです。が、先にあげたゲーム風景と卒業式からプロムまでのシークエンスのダンスと歌。ミュージカルの本場アメリカ、さすが、その裾野の広いこと。10代後半から20代前半のミュージカル・スターの実力のほどを知らされます。
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■「ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」劇場・作品情報はコチラ
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ヘリコプターショットで湖の面を嘗めていくオープニング。加速して道路にカメラが入るとアストンマーティンとアルファロメオの激しいカーチェイスが展開しています。前作「007/カジノロワイヤル」のラストから一時間後、という設定。ベニスで、ボンドが初めて愛した女ヴェスパーが何故、自から死を選んだのか、彼女を背後で操っていた組織を曝こうとするボンド。「007/慰めの報酬」は始まりから終りまでアクション一色であります。組織のボス、ドミニク・グリーンを追ってハイチに飛び、そこで謎の女カミーユと出逢う。同じ目的を持つ男と女。それは復讐であります。グリーンの野望はボリビアにありました。今までの007では黒幕の野望はゴールドであったり、石油であったり、宇宙支配であったりしましたが、今回は“エコ”。そういう時代になったのですねぇ。監督は「ネバーランド」のマーク・フォスターでありますから丹念な構築と丁寧な演出、特に組織の幹部たちの会議は“トスカ”を上演するオペラの会場。このオペラとボンドの心境の重なり。タキシードは着るものの2分後には血に染まります。ベッドシーンも瞬きの間に済ませボリビアのホテルの大災上のクライマックスへ…。
ほとんどのアクションをダニエル本人が決行!!ダニエルの口から、カーチェイスから古都シエナの街の追いかけシーンを絶対、見て欲しいと…。完全満足の一本です。
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(C) Quantum of Solace 2008 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
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さて、パート2「チェ/39歳 別れの手紙」です。オープニングは、カストロがチェの別れの手紙を公の場で読むテレビ中継から始まります。カストロ政権にチェが加わらなかった疑問への説明として行われたものでした。チェは、その頃(1965年後半はコンゴの反乱軍支援をしていたが失敗して帰国。ボリビアの人民解放の準備をすすめていた。1966年、11月4日、頭髪の薄い中年男“ラモン”に変装してボリビアに入ります)ボリビアがアメリカと強力な関係を築くバリエントス大統領の独裁政権下にあり、農民やインディオが圧制と貧困にあえいでいるのを解放するための新たな革命戦争を始めていた。
パート2は、ゲリラとしての困難な戦いの末に、捕えられ、銃殺されるまでのチェの姿を“ボリビア日記”の形式で描かれていきます。悲劇へと向っていくストーリーなのでパート1より沈着さが前面に出てきます。特に農民たちを味方につけることが出来なかったシンドさ、ボリビア共産党の協力が得られなかったことで迷走していく姿は、“革命”というものの難しさをまざまざと見せてくれます。来日したベニチオに「あなたが演じたゲバラは本当に素晴らしかった。だから“チェ・ゲバラ”本人も、きっと素晴らしい男だったと思わせてくれました」。と言ったら、それまで無愛想だった態度が一変して、これ以上ない笑顔になって私を抱いてくれました。チェが銃殺される前のベニチオの顔を見てください。なんと美しい男が、と心から思えますから…。
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■「チェ 39歳 別れの手紙」劇場・作品情報はコチラ
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暮に、スティーブン・ソダーバーグ監督とベニチオ・デル・トロが来日し、インタビューさせていただきました。そう「チェ」が公開されるからであります。「チェ」は2部作となっていて「28歳の革命」がパート1、これを3週間公開したあとパート2の「39歳 別れの手紙」を3週間公開する予定になっています(シネコンでの上映だとパート1、パート2と連続上映という可能性もありますが…)。
今週は「チェ/28歳の革命」についてであります。パート1と2とどっちが好きか、と問われれば、私はパート1の方が好きです。というのもソダーバーグらしい構成の仕方をしているからです。「オーシャンズ11」以来、なんとなく彼はエンタテインメントの監督ととられがちでありますが、從来は「トラフィック」のようなハードな映画を撮る人なのです。今回、チェ・ゲバラというTシャツの柄でしかしらないだろう人たちに見てもらうために作った映画としては、「28歳の革命」はワクワクするようなテクスチャーになっています。まず1964年のニューヨーク、国連総会の演説からのオープニングです。そこからカストロと出会い、メキシコから82人の兵士とグラマン号に乗ってキューバに入り、2万人の政府軍と戦う様へと展開していきます。そしてサンタクララを占領、ハバナに向って前進という具合に革命成功へという希望に充ちた人生の前半、喘息を患いながら兵士を指揮していく姿。ゲバラの格好良さに惚れ惚れする一作です。
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お正月に“ダークファンタジー”の傑作をご覧あれ!!3年前公開された「ヘルボーイ」の2作目「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」がお目見えであります。ナチスの手で、この世に呼び出された悪魔の赤ちゃんは“ヘルボーイ”と呼ばれ、超常現象捜査防衛局“BPRD”のスペシャル・エージェントになりました。一作目はマイク・ミニョーラの原作コミックをギレルモ・デル・トロが映画化しましたが、今回はギレルモが「パンズ・ラビリンス」を撮影中にミニョーラとストーリーを練りあげた映画用のオリジナル・ストーリーなのです。
今回は化け物のマーケット(ニューヨークのど真ん中にあるのですぞ)にヘルボーイたちが侵入するという、もうファンなら涙を流すに違いないシーンが用意されています。40近いクリーチャーのデザインをギレルモ自身がやったと自慢していました。私が「スター・ウォーズ」のバー・ラウンジでのクリーチャーたちへのオーマージュですかと聞いたら、「あのシーンには同じクリーチャーが沢山出ていたけれど、うちのには、どれひとつとっても同じものはいない」と言っていました。
今回は“闇の王国”の王子が人間世界を絶滅するために、封印されていた絶大な力を持つ“ゴールデン・アーミー”を出動させようと企むのです。それに対してヘルボーイ以下“BPRD”が、どう防衛するのか…。もう見ている最中は総ての現世を忘れて映画の中に入っていける傑作であります。大満足!!。
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★洋画部門![]()
@つぐない
評:驚愕の展開、途中からダムが決壊したくらい泣きました。
A12人の怒れる男
評:S・ルメット版を越えて美事な出来栄え!!
Bバンク・ジョブ
評:事実を推理して、なお痛快な出来に脱帽!!
C君のためなら千回でも
評:少年の頃と大人になった日の因果関係の作り方に感動
Dいつか眠りにつく前に
評:M・ストリープとV・レットグレーブの顔合せだけで満足!!
E永遠のこどもたち
評:スペインの“ダークファンタジー”の新しい担い手に拍手!!
★日本映画部門![]()
@ぐるりのこと
評:間違いなく今年の最良の収穫。
Aおくりびと
評:モックンの端正な所作に感動。
Bクライマーズ・ハイ
評:原田監督、初めての秀作。堤クン、堺クンの好演も○。
C次郎長三国志
評:雅彦ちゃんの才能に、またまた感心。キャスティングの妙を楽しみました。
ここではベストに入れたくても漏れたものを中心に書きます。
「バンテージ・ポイント」の作りのうまさに感心し、「魔法にかけられて」の、アニメを逆手にとったアイディアにド肝を抜かれ、文句なく楽しみました。「最高の人生の見つけ方」のジャック・ニコルソンの、クサイが、キッチリと演じるという姿勢に敬意を表し、「ジュノ」の高校生の妊娠に現代を感じ、「イースタン・プロミス」で私の知らないロンドンを知りました。「赤い風船」は40何年振りの再会で、「白い馬」と共にCGの無かった頃、これだけのファンタジーを撮りあげたラモリスに今さらながら頭が下りました。「カンフー・パンダ」はパンダが好きではなかった私に興味を持たせてくれただけでも感謝をしなければならない映画でした。
おバカキャラがブレークした今年の中で「俺たちダンクシューター」のアッケラカンとした笑いは嬉しかった。
ドキュメント映画は2本あります。「ヤング@ハート」平均年齢80歳のジイさんバアさんのコーラス隊に生きる勇気をもらいました。「ザ・ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト」マーティン・スコセッシの人柄と、その演出力、その編集の美技に酔い“R・S”のメンバーの姿は変わっても少年のような表情と心情に拍手を送ります。ラストの、カメラがニューヨークの夜景を撮るシーンのユーモアは何時までも忘れないでしょう。
さて、私のベストの中に入れてませんが、この年に見られたことを感謝しなけれいけない作品に「潜水服は蝶の夢を見る」があります。何故、これをベストの中に入れなかったかというと、この作品は映画という域を越えているからであります。左の瞼しか動かなくなった男が、コミュニケーション方法を見つけ、いや、周りの人間たちの中に、飛び抜けて優秀な人間がいて、主人公の元編集者と、コミュニケーションを取るために多大な努力をしたこと、それによって彼が、一冊の本を出版したこと、それを映画にしようとした連中、言葉にも出来ない行動力と決断、頭が下がる、というのはこのことでしょう。見ている間、楽しいところは一ヶ所もありませんでした。マックス・フォン・シドー演じる父親がヒゲをそるシーンのジョリジョリという音、言葉を交わすことの出来ない父親との電話、気がつかないうちに涙が頬をつたっていました。試写室が明くなった時“これが映画か”と自分に問いました。観たのだから映画なのでありますが、人間の力の無限さを知りました。色々な映画が存在しても当り前なのですが、人智を越えたものを果して映画といっていいのか…。だから別格にしました。
「潜水服は蝶の夢を見る」まではいきませんが、同じようなテクスチャーを感じた映画に「イントゥ・ザ・ワイルド」がありました。ショーン・ペンの心の中が手にとるように判った映画でした。自然の中に自分を置いたら、きっと、このように喜び、怖れるだろうと…。今年も、映画に暮れ、映画に明けた年でした。
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TSUTAYA onlineでも「おすぎが選ぶ2008年映画ベスト10」を特集中!!
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私がホラーやサスペンスものが好きということもありますが(別に出来は良くなくても一応は見ないと落ちつかないってことであります。その中で“うん、これはいい!!”というのがあれば、異常に嬉しくなってしまうのです)、キーファー・サザーランド主演のサスペンス・ホラー「ミラーズ」は一見の価値ありの映画です。ニューヨーク市警の刑事だったベン・カーソンは同僚を誤って射殺させてしまって職を失い、家族とも別居し、今は妹アンジェラのアパートに転がりこんでいる。家族との生活をとり戻したいベンが選んだ仕事は、ニューヨーク6番街にあるデパートの夜警だった。ただし、このデパート“メイフラワー”は5年前に大火災で焼け落ち、保険関係の法的手続き上の関係で取り残されたままのものだった。出勤初日に焼け跡に足を入れたベンの前に広がる光景は無残なものであったが、たったひとつ、今、作ったばかりの様に輝いている巨大な鏡があった。思わず吸い寄せられて鏡の前に立つベン。突然、ベンの身体を焼きつくすような激痛が走る。フロアに転げまわるベン。現実は、ただ転げまわっている姿なのに鏡の中のベンは火ダルマだった。このことがあってからベンの周りに不可思議な現象が…。
ひとつ、ひとつのエピソードが、それぞれ怖く出来ていますが、驚愕はラストであります。思わず“うまい”と口にしてしまいました。ラストまでシッカリみて、その美味さを味わって下さい。
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「ヘルボーイ」「パンズ・ラビリンス」でダーク・ファンタジーというジャンルを確立したギレルモ・デル・トロがプロデュースして、スペインの新進監督をデビューさせたのが「永遠のこどもたち」です。灯台がある岬の海辺に、30年前は孤児院がありました。
その孤児院で少女時代を過ごしたラウラは、今は閉鎖された孤児院を買い取り、障害をもつ子供たちのためのホームとして再建するため、夫カルロスと息子シモンと移り住むことに…。古くて広い屋敷の中で7歳の息子は遊ぶ相手もいないため、空想上の友だちを作り名前までつけラウラに話すようになります。
ホームのオープンを控えてシモンの相手にならなかったラウラの前からシモンが消えたのは、オープン前の入園希望のためのパーティーの当日だった。怪しい老女の訪門、広大な屋敷の中に突如響き渡る大きな物音、誰かに監視されているような気配。果してシモンはどこに…。空想上の友だちは、本当に空想だけなのか…。訪れた老女の正体は…。
J・A・バヨナ監督の才気がキラキラ光ります。ドキッとする怖さの向うに見えてくる美しくも哀しいラストです。私は彼岸と此岸という考え方を持つ西洋人がいることに感銘を受けました。そして大いに泣いたのであります。
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