
「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」は映画史初の“若返り”ものであります。それをブラッド・ピットが演じる、という夢のような映画です。私が初めてブラピに会ったのは「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の時でした。少年のような身体つきで、抱きつくと石鹸の香りがしました。そのくらい若かったのです。あの時のブラピがスクリーンの中にいたのです。それだけで充分、満足でした。
若く、しなやかで美しいブラピの前に、年老いて、精彩の無いブラピも見られます。80歳で生まれてきて(赤ちゃんの顔が80歳なのです)、年を老るごとに若くなっていくベンジャミンの一生を彼の妻だったデイジーの回想で見せていきます。ということはケイト・ブランシェットも冒頭から老けてベッドに横たわっているのであります。「逆も、また真なり」という言葉を思い出してしまうくらい、年寄りで生まれ、子供で死んでいく、どちらにしろ、生まれる時も死ぬ時も“何も知らない状態”なのです。これは目から鱗でした。そうなんだ、どっちにしろ人間というものは、そういうものなのだ、と当り前のことを気づかせてくれたのです。人間の生、死、愛を今さらながら考えさせてくれました。デヴィッド・フィンチャーの語り口も、いい様のないくらいうまく、映像も、美術も、衣装も、音楽も文句なく美しく、不思議な、不思議な体験をさせてもらいました。
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