おすぎのシネマ言いたい放題

映画評論家おすぎが、公開映画を一刀両断!いま観るべき映画の答えは、このブログのなかにある!

プロフィール

プロフィール画像
おすぎ
1945年神奈川県生まれ。映画評論家。
テレビ、ラジオ出演のほか新聞・雑誌の執筆、講演やイベントの企画制作など多岐にわたり活動している。

最近のレビュー・記事

このブログで使用したタグ

ブックマーク

RSS1.0

ハンコック

おすぎ

ハンコック.jpg
ハリウッドは、この夏、アメリカン・コミックの映画化で賑わっています。ほとんどが原作のあるものばかり、その中で「ハンコック」は、まったくのオリジナルのスーパーマンの話であります。それも、史上一の汚い、無謀で乱暴者のヒーローなのです。

“ハンコック”は朝から酒浸りで、薄汚い格好で道端のベンチでひっくり返っています。子供がきて事件が起こった、と知らせても、すぐには動き出そうとせず、子供に“クズ”と言われてしまう体たらく…。しかし、動き出せば、その力は超人的、空に飛びあがれば地面のアスファルトは粉々に…。着地をすれば道路に大きな穴をあけてしまう。踏切で渋滞のため線路に立ち往生した車を助けるために、突っこんできた列車をペチャンコに…。浜に打ち上げられ動けない鯨の尾を片手で持って海に投げ飛ばすが、沖に航行中の汽船にぶつけてしまう始末…。そんなハンコックがエージェントのPRマンに出会い庶民に愛されるヒーローになるまでのお話。

演じるのはウィル・スミス。何故、ハンコックは記憶を失ってしまっていたのか、良きヒーローとなろうとするハンコックの前に意外な人物がたちはだかるのであった…。それは誰で、ハンコックの抱える謎とは果たして何なのか…。ハンコックは愛されるスーパーヒーローとなれるのか…。私は“クズ”のまんまのハンコックの方が興味はありますが…とにかくハチャメチャでラストまで見てしまいます。
-----------------------------------------------
■「ハンコック」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


12人の怒れる男

おすぎ

12人の怒れる男.jpg
シドニー・ルメット監督による1957年の製作の「十二人の怒れる男」はハリウッド、いや、世界中の映画史に燦然と輝く名作であります。私は、この映画のリメイクは無いと信じていたし、万が一、出来たとしてもルメット版を越えるなんてことはあるまい、いや、不可能だと思っていました。それが、どうでしょう。リメイクしちゃいました。それもロシアで…。なんと巨匠のニキータ・ミハルコフが…。しかもルメット版とはまったく異なった意味で、これも史上に残る名画を作り出したのです。ただし、'57年のとは内容はまったく違います。借りたのは構造だけ…。それに現代のロシアの持つ問題をつけ加えて、それは美事な映画にしてくれました。

チェチェン人の少年がロシア人の養父を殺害した罪で裁判にかけられます。目撃者もあり、証拠も揃っている、容疑は明白です。各分野から任意に選ばれた陪審員たちも審議は簡単に終わる思っていたが…。ひとりの男が有罪支持をしなかったために、長い審議に入っていきます。陪審員の部屋が改築中なので審議は小学校の体育館で行われることに…。この舞台設定も展開のひとつの道具に上手に使われます。タイトルバックの階段を駈け降りる足のカットと、チェチェンの戦いの中で戦車の陰から走り出てくる犬のショットが、ラストに効いてくる妙を充分楽しんでください。邦題は「12人の怒れる男」です。
-----------------------------------------------
■「12人の怒れる男」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


俺たちダンクシューター

おすぎ

俺たちダンクシューター.jpg
「俺たちフィギュアスケーター」という小気味いい“オバカ・コメディー映画”がありました。スマッシュ・ヒットを飛ばした、あの映画に続編かと思わすような「俺たちダンクシューター」というタイトルの映画の登場です。“フィギュア〜”とは、なんの関係もありません。“ダンクシューター”の方は原題が「セミ・プロ」といいます。

'70年代のアメリカではプロ・バスケットリーグは、NBAとABAの2大リーグがありました。NBAが競技性や勝敗を重視するのに比べ、ABAはパフォーマンス優先のエンタテインメントリーグでありましたでありました。昔、歌手で“ラブ・ミー・セクシー”というプラチナヒットを持つジャッキー・ムーン(ウィル・フェレル)は、その印税でABAの“フリント・トロピックス”を買収し、オーナー兼コーチ、選手という目立ちたがり屋振りを発揮して悦に入っていましたが、ある日、NBAがABAを吸収すると発表。ABAは解散し、上位4チームがNBA入り(毎試合2,000人観客動員が必須条件)が出来ることに…。実力のまったく無い“トロピックス”は元NBAの選手モニック(ウディ・ハレルソン)を迎え、4位になるためにチーム一丸となって挑戦することに…。

バスケットの試合を丹念に描いていて、エキサイティングで、随所に笑いがあり、その上、ラストは感動の嵐、仕舞いには“涙”まで誘ってしまう素晴らしさ。見そこなうと今年の運の半分は無くすよ!!
-----------------------------------------------
■「俺たちダンクシューター」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


アクロス・ザ・ユニバース

おすぎ

アクロス・ザ・ユニバース.jpg
ブロードウェイ・ミュージカル「ライオンキング」の演出家で、映画「タイタス」の監督をしたジュリー・テイモアが、ビートルズの33曲のナンバーを使って作ったシネ・ミュージカルが「アクロス・ザ・ユニバース」であります。しかし、このミュージカルはビートルズをあつかったものではありません。ビートルズのメロディと歌詞を使用して、まったく新しい、オリジナルのストーリーを展開していきます。

基本的には“ボーイ・ミーツ・ガール”で、オープニングはイギリス、リバプール。造船所で働く青年ジュード(ジム・スタージェス)は父親捜しにアメリカへ旅に出ます。そこでマックス(ジョー・アンダーソン)と会って親友に…。ふたりはニューヨークのグリニッジ・ビレッジに住みはじめます。そこで様々な人、若者たちに出会います。60年代のアメリカはベトナム戦争、反戦運動、黒人解放運動、ドラッグ・カルチャー、ロックが流れ、混沌と反骨の精神に充ち溢れていた。そんな時代をバックにして青春を謳歌した若者たちの生態を、まるで万華鏡をのぞくような華麗でファンタジックな映像で見せてくれる映画です。

随所にテイモアの才気が噴出します。ダンスナンバーは息が飲むほどスピーディーで革命的、ビートルズのナンバーが耳に心地良く、「えっえー“ヘイ・ジュード”をここまで引っぱるかあ」というほど的確にストーリーにはめこんでいきます。楽しく見ているうちにラストは感動の恋の結末!!
-----------------------------------------------
■「アクロス・ザ・ユニバース」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ダークナイト

おすぎ

ダークナイト.jpg
「ダークナイト(夜の騎士)」はクリストファー・ノーラン監督とクリスチャン・ベールが組んだ「バッドマン/ビギンズ」の2作目であります。話題は、今年急死した「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた“ヒース・レジャー”が世紀の大悪党“ジョーカー”を演じているということと、「サンキュー・スモーキング」で認知度があがったアーロン・エッカートがゴッサム・シティーの新任検事ハービー・デントとして登場してくることでしょう。ふたりともブルース・ウェイン=バットマンと複雑にかかわりあってきます。

今回の“バットマン”はハッキリ言って、扱いづらい作品です。“ジョーカー”という狂気じみた残忍な人物(第1期シリーズの第1作「バットマン」ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーとは、まったく異なった人物になっています)は、どんなルールも一切関係ない、たとえ自滅しても平気、ただ、ただ、破壊に熱中していく者として描かれています。彼が動くことでストーリーが次々と変化し、彼が何か仕掛ければ、まったく違う展開が始まります。それを書いたり、喋ったりすれば、映画を見る意味が希薄になってしまう怖れがあります。派手だし、サスペンスはたっぷりありますが、全篇、暗い、限りなく暗いのです。ゲイリー・オールドマンマイケル・ケインモーガン・フリーマンと名優揃いですが総てが迷っている。あげくに、そういう終わり方…。でも、つまらなくはない…。あなた見ますぅ…?
-----------------------------------------------
■「ダークナイト」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


カンフー・パンダ

おすぎ

カンフー・パンダ.jpg
別に“パンダ”が圧倒的に好きっていうわけでもありません。アニメーションは、どちらかというと嫌いなのに“ドリームワークス”がパンダを主役に“カンフー映画”を作ると聞いた時から「見たい!!」と何故か思いました。映画会社の試写室のところに立看板が登場した時、増々「見たい!!」。何で、そういう風に思ったかは定かではありませんが、そう思ったのです。今まで、これだけは絶対見たい、と思った映画は確かにありましたが、アニメではまったくありませんでした。まぁ普通、これだけ熱望しちゃうと、いざ見ると“フーンだぁ”になる可能性が大なのに今回は、それは期待以上だったのです。「カンフー・パンダ」楽しい。

まず、主人公のパンダのポーはラーメン屋の息子で運動はからっきしダメ。グーたらなのに“カンフーおたく”、平和の谷の山の頂上にある寺院にいる5人の“カンフー・マスター”に憧れている。平和の谷に危機が訪れようとしていた。宿敵の“タイ・ラン”が捕われの身から脱獄して、復讐に来るという。指導者の導師は5人のマスターから伝説の“龍の戦士”をきめるため武術大会を開くことに…勝者に“免許皆伝の巻き物”を渡すという。ポーは試合を見に行ってどういうわけか“龍の戦士”に指名される…。さあ、どうするポー!!

シネスコのスクリーンを生かした華麗なカンフーの技の数々。登場人物たちのキャラクターの妙味、映像の映像の美しさ。楽しい、面白い、嬉しくなっちゃうこの夏のアニメは「カンフー・パンダ」一本!!
-----------------------------------------------
■「カンフー・パンダ」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


インクレディブル・ハルク

おすぎ

インクレディブル・ハルク.jpg
ちょっぴり早いのですが8月1日公開の大活劇、大恋愛巨編の紹介を…。「インクレディブル・ハルク」。そう「ハルク」の登場です。2003年にアン・リーの手で映画化(主演はエリック・バナ)されましたが、今回はあんな凡作とは大違いの大興奮の一本です。

ブルース・バナーは科学者で、ロス将軍の命令で、人体が放射能を受けたとき、どこまで抵抗出来るか、そして、抵抗出来る身体を作る実験をしていた。ところが実験の最中(さなか)、事故が起こり、多量のガンマ線を浴びてモンスターに変身してしまう。物語の発端を今回はタイトルバックで見せてくれます。だからオープニングは、そんな身体になってしまったブルースがブラジル、リオ・デ・ジャネイロに隠れ、怒りを感じたり興奮したりして心拍数が200を超えると、アドレナリンの分泌とともに3メートルばかりの緑色のモンスター=ハルクに変身してしまうのを抑えるために、怒りを制御する方法を学んでいて、仕事は街の清涼飲料水の工場で働いていた。

その工場である日、機械の故障を直している時、指を傷つけ、その傷から流れた血がベルトコンベアの上にポトリ。急いで血を拭きとり安心するブルース。しかし、一滴の血がボトルの中に…。飲料水の入ったボトルはアメリカへ。その飲料水を飲んだ老人が異常な行動を起こしたこと、その情報をロス将軍がキャッチし、リオへ軍隊を送りこみ、戦闘に…。工場でブルースはハルクに変身…そして…。ブルースには恋人がいました。変身し異形なモンスターに変わってしまった愛する人を恋人ベティは愛し通せるのか…。変わらぬ愛の姿に見る者は感動するでしょう。ブルースを名優エドワード・ノートンが大熱演。クライマックスの大戦闘シーンは大迫力。お見逃しなく…。
-----------------------------------------------
■「インクレディブル・ハルク」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


赤い風船

おすぎ

赤い風船.jpg
何10年も前に見た映画を、その後何10年もの間、何度も見てみたい、なんて思うこと、そう滅多にあることではありません。中学生になるかならない頃、封切館でなく3番館と呼ばれた映画館で見た記憶がウッスラとあり、その後、横浜市の図書館のような施設の小さなスクリーンで、もう一度出会ってから50年近く見ていない映画。VTR、DVDも、これだけ発売されているのに、どこを見ても姿形の見えなかった映画。それが、この夏、映画館で見られることに…。

その映画とはアルベール・ラモリス監督、1956年製作「赤い風船」なのです。10歳のパスカルが、ある朝、学校へ行く途中で見つけた、1個の赤い風船、街灯のランプの枝のところに引っ掛かっていたのを街灯をよじ登って手にします。バスに乗ろうとしますが、風船を持って乗ってはいけない、と車掌に言われ、走って学校へ。授業中待っていてくれた赤い風船を、放課後しっかり握って家路へ。途中で雨が降ってきて、自分は濡れても風船を濡れさせないように、おじさんやおばさんの傘の中に入れさせてもらって家へ。家ではおばあさんが風船を家に入れてはいけないという。仕方なく、風船によく言い聞かせて手から紐を離すと、不思議なことに風船はパスカルの部屋の窓のところで浮いています。赤い風船はパスカルと友達に…。彼の行くところ、どこでもついてくるように…。そして悲劇が…。

CGもVFXも発達していない時代に、こんなにファンタジーな映画があったことに大感銘です。'53年製の「白い馬」と同時上映。必見の2本です。
-----------------------------------------------
■「赤い風船」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


クライマーズ・ハイ

おすぎ

クライマーズ・ハイ.jpg
日本映画ってベストセラーを映画化して原作を越えたっていうものは少ないでしょう。「アウト」にしても「マークスの山」にしても、あんなに読んでいる時にワクワクしていたものが、映画にすると読者の頭の中で描かれた映像と少しも一致しないものになってしまう。勿論、脚色の段階で、原作と映画とは違うものだ、という意識があっての上でのことだろうけど、観る方としてみれば失望してしまうのです。

ところが原作を面白く読んで、その映画化をした作品を見て楽しんでしまう映画が出来たのです。横山秀夫“クライマーズ・ハイ”原田眞人が監督した映画「クライマーズ・ハイ」は、映画としてもエンターテイメントとしても大変良く出来た映画です。

1985年8月12日、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落しました。この未曾有の悲劇をマスコミは総力をあげて報道しました。大手の新聞社は大勢の記者を挙げて現地に入りました。一方、地方紙を発行している新聞社はどうだったのか、を描いたのが「クライマーズ・ハイ」です。主人公の全権デスク悠木を堤真一が熱演しています(私が見た限りでは、今までの出演作とは違って演技に巾が出てきました)。悠木の片腕となる県警キャップ佐山役の堺雅人も好演しています。ひとつの会社を舞台にした群像劇でありますが、それは観る者にとっても日常であるはず。必ず、どこかで胸を打たれると思います。
-----------------------------------------------
■「クライマーズ・ハイ」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

おすぎ

インディ・ジョーンズ.jpg
「インディ・ジョーンズ」シリーズ19年振りに登場。けっこう、危ぶんでいたのです。何しろ、ハリソン・フォード、年でありますから、そう66歳なのです。

2006年の「ファイヤーウォール」では、もうヨタヨタのアクションでしたけど、別にあの作品はアクションが売りではなく、年相応、いや、ビジネスマンが仕方なく悪者相手に殴り合いをする、という設定だからモタモタ、ヨタヨタであってもいいけれど、今回は“インディ・ジョーンズ”ですよ。“腐っても鯛”ぢゃございませんか。それなりに軽快にやって欲しい、と思って当たり前。ところが、これが裏切らないのです。

ヨタヨタ感が無いと言ったら嘘だけど(鞭を倉庫の梁に巻きつけ、自分の身体を移動させようとすれば、着地出来ず、振り子状態なってしまったり…)、それなりにガンバっているとこに好感を持ててしまうのです。それに今回のキー・ワードは“クリスタル・スカル”。マヤ文明などで出土した水晶で出来た頭蓋骨。これが超能力を発揮すると言われる代物。これをめぐってインディとマットと呼ばれる若者や、ケイト・ブランシェット扮するロシア軍の工作員イリーナが入り乱れます。

果たしてロシア軍は何を狙い、イリーナは何を知っているのか。核施設がオープニングの舞台、そしてナスカ平原の彼方まで舞台は拡がります。スピルバーグはやっぱり冒険活劇が似合っています。

-----------------------------------------------
■「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


イースタン・プロミス

おすぎ

イースタン・プロミス.jpg
デヴィッド・クローネンバーグという監督は“鬼才”などと呼ばれていますが、それって今は昔の話です。「スキャナーズ」や「裸のランチ」あたりの頃は“鬼才”はホメ言葉でしたが、3年前の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で“巨匠”の雰囲気を漂わせはじめ、今回の「イースタン・プロミス」では完全に“巨匠”になりました。そして、主演のヴィゴ・モーテンセンも、「ロード・オブ・ザ・リング」で大役をこなし「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でのクローネンバーグと組んで、一皮も二皮もむけて、堂々たる実力俳優として地位を確立しました。

「イースタン・プロミス」の意味は、イギリスにおける東欧組織による人身売買契約のことをいうそうです。で、舞台はクリスマスが近い冬のロンドン。ドラッグストアーに下半身を血だらけにした女の子が入ってきて倒れる。病院で手術をうけ、女の子を出産して死んでしまう。立ち合った看護師のアンナ(ナオミ・ワッツ)は生まれてきた子のために母親の身元を調べようとする。バッグから日記が出てき、ロシア人のタチアナ14歳と判る。日記にはロシアン・レストランのカードがはさまれていて、アンナはその店を訪れる。そこで謎の男ニコライ(V.モーテンセン)と出会う。これが運命的な出会いだった…。

ロンドンの別の顔(ロシアン・マフィアの暗躍)を描いて美事社会派サスペンスになっています。

-----------------------------------------------
■「イースタン・プロミス」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


JUNO/ジュノ

おすぎ

JUNO.jpg
本年度、米アカデミー賞の脚本賞でオスカーを獲ったことが話題になっている、と書いて、何故、脚本くらいで週刊誌などが記事にしてるかということを最初に言わなくてはイケませんね。

確かに「ジュノ」の脚本は良く出来ているし、それでホメられても少しもおかしくはありませんが、脚本を書いたディアブロ・コディは、これが初の映画用脚本で、ストリップ・ダンサーを経験した、というので話題の人になったのであります。そして、「ジュノ」の内容が、16歳の高校生が興味本位から同級生の男の子とセックスをしたら妊娠してしまった、というものなのです。こんな題材を日本で映画にしたら、もう暗くてシリアスで、でも結局産んじゃったら、養子に出そうと思っていたけど愛情が芽生えて、ひとりで強く子育てに励みました的な美談にしてしまうのにきまっています。

でも、「ジュノ」は、一回は自殺も考え、堕ろそうともしますが、産む決心をして、産んだ子を里子に出そうと里親まできめて、妊娠したことを両親に打ち明けて協力を求め、秋から冬、春が来て、予定日の初夏まで、お腹を大きくして毅然と生活していくのであります。明るく、率直に、少女から自立する女性に成長していく姿は見終わって“さわやか”な気持ちにさせてくれる秀作です。必見の一本です。

-----------------------------------------------
■「JUNO/ジュノ」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ぐるりのこと。

おすぎ

ぐるりのこと。.jpg
今年度、日本映画ナンバー・1と私が決めた映画が公開されます(6月7日より)。6年振りに新作を発表したのは「ハッシュ」の橋口亮輔監督。「ぐるりのこと。」は、法廷画家を職業としたカナオと本の編集者だった妻の翔子の10年にわたる夫婦の話です。

橋口さんは、この6年の間に“鬱(うつ)”を患い、そこからの回復の体験(映画の設定として翔子がウツになることは患う前から決まっていた、といいます)をし、肉体的にも精神的にも、ツライ状態の中で撮り上げた作品です。映画の最初に翔子は妊娠していますが、お腹の子は死んでしまい、それがキッカケで“ウツ”にかかってしまいます。夫のカナオは、そんな妻と向き合いながら、裁判所で画を描いていきます。10年の月日の中で、様々な事件を絵にしていきます。その社会の動きと夫婦生活の時の流れがリンクされ、ひとつの夫婦の歴史が描かれていきます。

とにかく、これほど見ている最中に“夫婦”のやさしさが心に浸みこんだ映画は今までなかった。私はゲイだから、夫婦というものを頭では判っていても実感として感じたことはありませんでした。それが、この映画で「もしかしたら夫婦っていうものの何センチかが判った」心境になりました。夫役のリリー・フランキーさんがなんと美事な演技を見せてくれることか。必見の一本です。

-----------------------------------------------
■「ぐるりのこと。」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”

おすぎ

ナルニア2.jpg

「ナルニア国物語/第1章“ライオンと魔女”」はハッキリ言って“子供向け”でした。とは言っても“アスラン(ライオン)”の存在がケッコウ楽しめたのと、CGやVFXなどの進化がこの手のファンタジーには不可欠であると、まざまざと思わせてくれました。

今公開中の「ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”」は、“つまらなかった”と言う人もいますが、私はケッコウ楽しく見ました。前作より1300年後のナルニア国はテルマール人という人間によって侵略され、植物も動物も、ミノタウロスもドワーフも、多くの者は殺され、わずかに残った者たちは森深く隠れて暮らしていた。テルマール王国の正当な世継カスピアン王子は、伯父ミラースに実権を握られ追われる身となってしまった。追っ手にかこまれた王子は、最後の手段として博士がくれたスーザン女王の角笛を吹いた。その角笛の音はロンドンの地下鉄構内にいたペベンシー4兄妹(ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシー)をナルニア国へ戻すことに…。

この第2章では子供たちのグローイング・アップがメインに描かれます。特にピーターとスーザンの成長はめざましく、宣伝で“カスピアン王子”と謳っていますが、芯はこの兄妹たちのストーリーといっていいでしょう。CG、VFXも前作よりパワー・アップして、特に後半は楽しめました。

-----------------------------------------------
■「ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


アウェイ・フロム・ハー/君を想う

おすぎ

アウェイ・フロム・ハー.jpg

アルツハイマーを題材にした映画は「アイリス」などの良質なものがすでにありますが、「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」も、素晴らしく良く出来た映画です。驚くのは「死ぬまでにしたい10のこと」「あなたになら言える秘密のこと」の主演女優サラ・ポーリーが脚本、監督をしたことです。師匠のアトム・エゴヤンは製作総指揮という立場で、この映画に参加しています。

結婚して44年になるグラントとフィオーナは仲の良い、知的で、互いを深く愛している夫婦だった。そんな夫婦に不都合なことが訪れる。妻のフィオーナにアルツハイマー型認知症の影が忍び寄っていたのです。ある日の夕方、ひとりでクロスカントリーに出かけたフィオーナは自分がどこにいるのか判らなくなります。夜になってグラントが捜しに出た時、道端で途方に暮れていた妻を見つけました。病気を無視出来なくなり老人介護施設に入ることを決意したフィオーナは、夫の反対も聞かず施設に向かった…。

どんなに深く愛し合っていても、それは人生を変えてしまいます。忘れていく方もツライが、正気でいる方はもっとツライ人生になります。そのあたりを映画は冷酷なほどつき放して描きます。フィオーナ役のジュリー・クリスティーが迫心の演技を見せてくれます。品のいい、上質なものを身につけていた妻が施設の中で、すべてかまわなくなっていく様は…一見も二見も価値ある映画です。

-----------------------------------------------
■「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ランボー 最後の戦場

おすぎ

ランボー.jpg

20年振りに“ランボー”がスクリーンに戻ってきます。これが、ちょっとした衝撃なのであります。1982年、'85年、'88年のランボーは、どこか漫画チックな面がありました。紛争のある場所に出掛けて“一人軍隊(ワンマン・アーミー)”をやりますから、カリカチュアライズされたり、エンターテインメントだから許されちゃったりしました。ところが今回はスタローン自身が「“戦争”を本気で撮る」と宣言したらしい。

舞台はミャンマー。ランボーはどこにいたのか、これが“タイの北部のジャングル”なのです。毒蛇を捕えてスネークセンターに売って生計をたてたり、河に浮かべたボートで人や荷物を運んだりもしています。そんな毎日の中に、コロラド州のキリスト教支援団が訪れ、隣国ミャンマーの軍事政権が国境近くのカレン族を迫害し、虐殺しているので、彼らに医療品を届けるために道案内して欲しいと言う。初めは渋っていたランボーだが、一行の中のサラという女性に説得され出発することに…。一行をミャンマーに送って何日か後、彼らが軍隊に拉致されたという情報が入る。ランボーは傭兵部隊の男たちと支援団救出に向かうのだった…。

ストーリーはともかく、戦闘シーンのすさまじさにショックを受けました。60年映画を見てきて、かなり残酷なシーンも見ましたが、今回は思わず手で目を覆ってしまうシーンもあり、ちょっとヒキました。それでも一見の価値はあると思います。

-----------------------------------------------
■「ランボー 最後の戦場」特集ページはコチラ
-----------------------------------------------


最高の人生の見つけ方

おすぎ

最高の人生の見つけ方.jpg

ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンがプライベートにも親しくつき合っているっていうのも小さな驚きでありますが、このふたりが共演する「最高の人生の見つけ方」の息のあった演技には感嘆してしまいます。

原題は「棺おけリスト」といって、ガンにかかって余命6ヶ月と宣告された自動車整備士のカーター(M.フリーマン)が、学生時代にある教授から教わった“棺おけリスト(死ぬまでにやりたいこと、見たいものなどをリストにする)”をベッドの上に置いていると同室の大金持ちのエドワード(J・ニコルソン)が声を掛けてきて、リストのことを質問します。初めは邪険にしていましたがリストのことを話すと、エドワードも余命6ヶ月で、金は腐るほどあるからリストの中味を実行に移そうと、ふたりで病院から飛び出すことに…。

スカイダイビングからピラミッドの頂上、世界最高級のレストランの食事からアフリカでのライオン狩りなどなど、とても贅沢で楽しさに溢れた旅を見せてくれます。ただし、その根底に流れている“余命何日”という哀しさがストーリーに厚味を持たせてくれます。脚本のうまさとロブ・ライナーの演出の巧みさで笑いながら、ちょっぴり切なくなりながらも、“人生”“家族”“愛”“死”を考えさせてくれる秀作であります。ジャック・ニコルソンの存在感に圧倒されます。

----------------------------------------------
■「最高の人生の見つけ方」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ミスト

おすぎ

ミスト.jpg

スティーヴン・キング+フランク・ダラボン、といったら「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」の2大感動作のコンビであります。ダラボンは自分が長編デビューをするならキングの、この小説、というものがあったといいます。それが「霧」という恐怖小説で、今回、それがやっと実現したことになります。

「ミスト」はダラボンの製作、監督、脚本3役の映画です。別荘地に住む、映画ポスター画家のデヴィッドは前夜の嵐で庭の大木が倒れ、仕事場が破壊されたので息子のビリーを連れて町のスーパーマーケットに買物に出掛けようとして、妻のスティファニーの指摘で湖の対岸に発生した霧を見て不安に思った。スーパーマーケットに着き、知人たちと昨夜の嵐の話をしたりしていた時、突然大きな揺れがきて、停電になる。気がつくと建物はスッポリと濃い霧に包まれていた。ショッピングに来ていた人々が不安気にガラスの向うを見ている中、中年男が突びこんで来て「霧の中に何かいるっ!!」と叫んだ。霧の中にいるものの正体は…。

スーパーマーケットに閉じ込められた人間たちはパニックの末、それぞれの本性を徐々に現わしてくる。キングの描く外にいる何者も怖いが、本当に怖いのは人間である、という部分が非常にうまく描かれていて、映画に引きこまれていきます。ただ、霧の中から襲いかかってくる“もの”の全体像がなかなか掴めないイライラとラスト15分のクライマックスのあとの不条理に不快を感じる人がいるかもしれません。

----------------------------------------------
■「ミスト」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


スパイダーウィックの謎

おすぎ

スパイダーウィックの謎.jpg


私は「ネバーランド」で初めて“フレディ・ハイモア”という子役を見た時、とても生きている少年という風に思えなかったのです。
ティム・バートン「チャーリーとチョコレート工場」を見た時、ああ、この子は現実の世の中より、どちらかというと“ファンタジーの世界”に住む子供なんだなあとふっと思ったものでした。リュック・ベッソンの実写とアニメを併合した「アーサーとミニモイの不思議な国」で、その気を一層、強くしました。「スパイダーウィックの謎」を見る前、なんの知識も情報も見ないで試写にのぞみ、F・ハイモアが2役を演じることを知り、なんとなく期待してしまったのです。妖精の世界の悪玉と戦う少年だ、というのでありますから…。“スパイダーウィック”とは人の名前で、ハイモア扮するサイモンとジャレッドの“大叔父、アーサー・スパイダーウィッグ”のこと。この双子の兄弟と姉のマロリー、母親のヘレンは、アーサーが80年前に建てた奇妙な屋敷に引っ越してきました。扉をあけて入った途端、信じられないことが次々を起こります。勝ち気で、冒険好きのサイモンは屋敷の中にある不思議な部屋で、アーサーが書き上げた一冊の本を見つけます。その“妖精大図鑑”には“警告”がつけられていて、開けてはいけない、と書かれていました。サイモンは、その封印を解いてしまいます…。さあここからはCGとVFXを駆使しての悪妖精と双子の兄弟と姉の連合軍との、華麗で、少し醜悪で、楽しい戦いが繰り拡げられていきます。まったくF・ハイモアはファンタジーの世界の住人だと判るのであります。大人も充分、楽しめるファンタジーの秀作です。

----------------------------------------------
■「スパイダーウィックの謎」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------


ヒットマン

おすぎ

ヒットマン.jpg

「ヒットマン」なんてタイトルの映画はつまらないのにきまっている、と思って見て、これが意外な“ヒロイモノ”で楽しんで見てしまった。と言っても、誰にも彼にも「面白いから見なさい!!」と“オススメ”する映画では無いと思います。原作がヒット・アクション・ゲームですから銃撃戦、殺し屋同士のプロの緊迫感溢れた対決、武器密売組織との格闘、ラストのクライマックスでのバトル。主人公ヒットマンである“エージェント47”が繰り出す、流れるように華麗で、まるでバレエの振り付けを見るごとくの殺人技の数々は、CGもVFXも併用してのものですから想像出来ないことは無いけれど、そのスピード感といい、タイミングといい、今まで見た、この手の作品の中でも秀逸なもの、といっていいでしょう。それとスタイリッシュでエキサイティング(まあ、なんと使い古された修飾語でありますが…)なヴィジュアル。これが息つく間もなく連続で展開されると、一種の“目まい”を生じて、度々、ストーリーが見えなくなります(ここはどこ、私は誰状態に陥りますが、シンプルなストーリーなのですぐ立ち直ります。まあ、そこがいいとこね、なのです…)。では何故、良かったのか、というと“エージェント47”役のティモシー・オリファントがスキンヘッドで後頭部にバーコードのタトゥーを入れた異様なスタイルなのに、時に見せる悪戯っ子みたいな表情がチャーミングで見つづけてしまった、という理由。

----------------------------------------------
■「ヒットマン」劇場・作品情報はコチラ
-----------------------------------------------