おすぎのシネマ言いたい放題

映画評論家おすぎが、公開映画を一刀両断!いま観るべき映画の答えは、このブログのなかにある!

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おすぎ
1945年神奈川県生まれ。映画評論家。
テレビ、ラジオ出演のほか新聞・雑誌の執筆、講演やイベントの企画制作など多岐にわたり活動している。

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赤い風船

おすぎ

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何10年も前に見た映画を、その後何10年もの間、何度も見てみたい、なんて思うこと、そう滅多にあることではありません。中学生になるかならない頃、封切館でなく3番館と呼ばれた映画館で見た記憶がウッスラとあり、その後、横浜市の図書館のような施設の小さなスクリーンで、もう一度出会ってから50年近く見ていない映画。VTR、DVDも、これだけ発売されているのに、どこを見ても姿形の見えなかった映画。それが、この夏、映画館で見られることに…。

その映画とはアルベール・ラモリス監督、1956年製作「赤い風船」なのです。10歳のパスカルが、ある朝、学校へ行く途中で見つけた、1個の赤い風船、街灯のランプの枝のところに引っ掛かっていたのを街灯をよじ登って手にします。バスに乗ろうとしますが、風船を持って乗ってはいけない、と車掌に言われ、走って学校へ。授業中待っていてくれた赤い風船を、放課後しっかり握って家路へ。途中で雨が降ってきて、自分は濡れても風船を濡れさせないように、おじさんやおばさんの傘の中に入れさせてもらって家へ。家ではおばあさんが風船を家に入れてはいけないという。仕方なく、風船によく言い聞かせて手から紐を離すと、不思議なことに風船はパスカルの部屋の窓のところで浮いています。赤い風船はパスカルと友達に…。彼の行くところ、どこでもついてくるように…。そして悲劇が…。

CGもVFXも発達していない時代に、こんなにファンタジーな映画があったことに大感銘です。'53年製の「白い馬」と同時上映。必見の2本です。
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■「赤い風船」劇場・作品情報はコチラ
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クライマーズ・ハイ

おすぎ

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日本映画ってベストセラーを映画化して原作を越えたっていうものは少ないでしょう。「アウト」にしても「マークスの山」にしても、あんなに読んでいる時にワクワクしていたものが、映画にすると読者の頭の中で描かれた映像と少しも一致しないものになってしまう。勿論、脚色の段階で、原作と映画とは違うものだ、という意識があっての上でのことだろうけど、観る方としてみれば失望してしまうのです。

ところが原作を面白く読んで、その映画化をした作品を見て楽しんでしまう映画が出来たのです。横山秀夫“クライマーズ・ハイ”原田眞人が監督した映画「クライマーズ・ハイ」は、映画としてもエンターテイメントとしても大変良く出来た映画です。

1985年8月12日、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落しました。この未曾有の悲劇をマスコミは総力をあげて報道しました。大手の新聞社は大勢の記者を挙げて現地に入りました。一方、地方紙を発行している新聞社はどうだったのか、を描いたのが「クライマーズ・ハイ」です。主人公の全権デスク悠木を堤真一が熱演しています(私が見た限りでは、今までの出演作とは違って演技に巾が出てきました)。悠木の片腕となる県警キャップ佐山役の堺雅人も好演しています。ひとつの会社を舞台にした群像劇でありますが、それは観る者にとっても日常であるはず。必ず、どこかで胸を打たれると思います。
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■「クライマーズ・ハイ」劇場・作品情報はコチラ
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インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

おすぎ

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「インディ・ジョーンズ」シリーズ19年振りに登場。けっこう、危ぶんでいたのです。何しろ、ハリソン・フォード、年でありますから、そう66歳なのです。

2006年の「ファイヤーウォール」では、もうヨタヨタのアクションでしたけど、別にあの作品はアクションが売りではなく、年相応、いや、ビジネスマンが仕方なく悪者相手に殴り合いをする、という設定だからモタモタ、ヨタヨタであってもいいけれど、今回は“インディ・ジョーンズ”ですよ。“腐っても鯛”ぢゃございませんか。それなりに軽快にやって欲しい、と思って当たり前。ところが、これが裏切らないのです。

ヨタヨタ感が無いと言ったら嘘だけど(鞭を倉庫の梁に巻きつけ、自分の身体を移動させようとすれば、着地出来ず、振り子状態なってしまったり…)、それなりにガンバっているとこに好感を持ててしまうのです。それに今回のキー・ワードは“クリスタル・スカル”。マヤ文明などで出土した水晶で出来た頭蓋骨。これが超能力を発揮すると言われる代物。これをめぐってインディとマットと呼ばれる若者や、ケイト・ブランシェット扮するロシア軍の工作員イリーナが入り乱れます。

果たしてロシア軍は何を狙い、イリーナは何を知っているのか。核施設がオープニングの舞台、そしてナスカ平原の彼方まで舞台は拡がります。スピルバーグはやっぱり冒険活劇が似合っています。

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イースタン・プロミス

おすぎ

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デヴィッド・クローネンバーグという監督は“鬼才”などと呼ばれていますが、それって今は昔の話です。「スキャナーズ」や「裸のランチ」あたりの頃は“鬼才”はホメ言葉でしたが、3年前の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で“巨匠”の雰囲気を漂わせはじめ、今回の「イースタン・プロミス」では完全に“巨匠”になりました。そして、主演のヴィゴ・モーテンセンも、「ロード・オブ・ザ・リング」で大役をこなし「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でのクローネンバーグと組んで、一皮も二皮もむけて、堂々たる実力俳優として地位を確立しました。

「イースタン・プロミス」の意味は、イギリスにおける東欧組織による人身売買契約のことをいうそうです。で、舞台はクリスマスが近い冬のロンドン。ドラッグストアーに下半身を血だらけにした女の子が入ってきて倒れる。病院で手術をうけ、女の子を出産して死んでしまう。立ち合った看護師のアンナ(ナオミ・ワッツ)は生まれてきた子のために母親の身元を調べようとする。バッグから日記が出てき、ロシア人のタチアナ14歳と判る。日記にはロシアン・レストランのカードがはさまれていて、アンナはその店を訪れる。そこで謎の男ニコライ(V.モーテンセン)と出会う。これが運命的な出会いだった…。

ロンドンの別の顔(ロシアン・マフィアの暗躍)を描いて美事社会派サスペンスになっています。

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JUNO/ジュノ

おすぎ

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本年度、米アカデミー賞の脚本賞でオスカーを獲ったことが話題になっている、と書いて、何故、脚本くらいで週刊誌などが記事にしてるかということを最初に言わなくてはイケませんね。

確かに「ジュノ」の脚本は良く出来ているし、それでホメられても少しもおかしくはありませんが、脚本を書いたディアブロ・コディは、これが初の映画用脚本で、ストリップ・ダンサーを経験した、というので話題の人になったのであります。そして、「ジュノ」の内容が、16歳の高校生が興味本位から同級生の男の子とセックスをしたら妊娠してしまった、というものなのです。こんな題材を日本で映画にしたら、もう暗くてシリアスで、でも結局産んじゃったら、養子に出そうと思っていたけど愛情が芽生えて、ひとりで強く子育てに励みました的な美談にしてしまうのにきまっています。

でも、「ジュノ」は、一回は自殺も考え、堕ろそうともしますが、産む決心をして、産んだ子を里子に出そうと里親まできめて、妊娠したことを両親に打ち明けて協力を求め、秋から冬、春が来て、予定日の初夏まで、お腹を大きくして毅然と生活していくのであります。明るく、率直に、少女から自立する女性に成長していく姿は見終わって“さわやか”な気持ちにさせてくれる秀作です。必見の一本です。

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ぐるりのこと。

おすぎ

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今年度、日本映画ナンバー・1と私が決めた映画が公開されます(6月7日より)。6年振りに新作を発表したのは「ハッシュ」の橋口亮輔監督。「ぐるりのこと。」は、法廷画家を職業としたカナオと本の編集者だった妻の翔子の10年にわたる夫婦の話です。

橋口さんは、この6年の間に“鬱(うつ)”を患い、そこからの回復の体験(映画の設定として翔子がウツになることは患う前から決まっていた、といいます)をし、肉体的にも精神的にも、ツライ状態の中で撮り上げた作品です。映画の最初に翔子は妊娠していますが、お腹の子は死んでしまい、それがキッカケで“ウツ”にかかってしまいます。夫のカナオは、そんな妻と向き合いながら、裁判所で画を描いていきます。10年の月日の中で、様々な事件を絵にしていきます。その社会の動きと夫婦生活の時の流れがリンクされ、ひとつの夫婦の歴史が描かれていきます。

とにかく、これほど見ている最中に“夫婦”のやさしさが心に浸みこんだ映画は今までなかった。私はゲイだから、夫婦というものを頭では判っていても実感として感じたことはありませんでした。それが、この映画で「もしかしたら夫婦っていうものの何センチかが判った」心境になりました。夫役のリリー・フランキーさんがなんと美事な演技を見せてくれることか。必見の一本です。

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ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”

おすぎ

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「ナルニア国物語/第1章“ライオンと魔女”」はハッキリ言って“子供向け”でした。とは言っても“アスラン(ライオン)”の存在がケッコウ楽しめたのと、CGやVFXなどの進化がこの手のファンタジーには不可欠であると、まざまざと思わせてくれました。

今公開中の「ナルニア国物語/第2章“カスピアン王子の角笛”」は、“つまらなかった”と言う人もいますが、私はケッコウ楽しく見ました。前作より1300年後のナルニア国はテルマール人という人間によって侵略され、植物も動物も、ミノタウロスもドワーフも、多くの者は殺され、わずかに残った者たちは森深く隠れて暮らしていた。テルマール王国の正当な世継カスピアン王子は、伯父ミラースに実権を握られ追われる身となってしまった。追っ手にかこまれた王子は、最後の手段として博士がくれたスーザン女王の角笛を吹いた。その角笛の音はロンドンの地下鉄構内にいたペベンシー4兄妹(ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシー)をナルニア国へ戻すことに…。

この第2章では子供たちのグローイング・アップがメインに描かれます。特にピーターとスーザンの成長はめざましく、宣伝で“カスピアン王子”と謳っていますが、芯はこの兄妹たちのストーリーといっていいでしょう。CG、VFXも前作よりパワー・アップして、特に後半は楽しめました。

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アウェイ・フロム・ハー/君を想う

おすぎ

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アルツハイマーを題材にした映画は「アイリス」などの良質なものがすでにありますが、「アウェイ・フロム・ハー/君を想う」も、素晴らしく良く出来た映画です。驚くのは「死ぬまでにしたい10のこと」「あなたになら言える秘密のこと」の主演女優サラ・ポーリーが脚本、監督をしたことです。師匠のアトム・エゴヤンは製作総指揮という立場で、この映画に参加しています。

結婚して44年になるグラントとフィオーナは仲の良い、知的で、互いを深く愛している夫婦だった。そんな夫婦に不都合なことが訪れる。妻のフィオーナにアルツハイマー型認知症の影が忍び寄っていたのです。ある日の夕方、ひとりでクロスカントリーに出かけたフィオーナは自分がどこにいるのか判らなくなります。夜になってグラントが捜しに出た時、道端で途方に暮れていた妻を見つけました。病気を無視出来なくなり老人介護施設に入ることを決意したフィオーナは、夫の反対も聞かず施設に向かった…。

どんなに深く愛し合っていても、それは人生を変えてしまいます。忘れていく方もツライが、正気でいる方はもっとツライ人生になります。そのあたりを映画は冷酷なほどつき放して描きます。フィオーナ役のジュリー・クリスティーが迫心の演技を見せてくれます。品のいい、上質なものを身につけていた妻が施設の中で、すべてかまわなくなっていく様は…一見も二見も価値ある映画です。

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ランボー 最後の戦場

おすぎ

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20年振りに“ランボー”がスクリーンに戻ってきます。これが、ちょっとした衝撃なのであります。1982年、'85年、'88年のランボーは、どこか漫画チックな面がありました。紛争のある場所に出掛けて“一人軍隊(ワンマン・アーミー)”をやりますから、カリカチュアライズされたり、エンターテインメントだから許されちゃったりしました。ところが今回はスタローン自身が「“戦争”を本気で撮る」と宣言したらしい。

舞台はミャンマー。ランボーはどこにいたのか、これが“タイの北部のジャングル”なのです。毒蛇を捕えてスネークセンターに売って生計をたてたり、河に浮かべたボートで人や荷物を運んだりもしています。そんな毎日の中に、コロラド州のキリスト教支援団が訪れ、隣国ミャンマーの軍事政権が国境近くのカレン族を迫害し、虐殺しているので、彼らに医療品を届けるために道案内して欲しいと言う。初めは渋っていたランボーだが、一行の中のサラという女性に説得され出発することに…。一行をミャンマーに送って何日か後、彼らが軍隊に拉致されたという情報が入る。ランボーは傭兵部隊の男たちと支援団救出に向かうのだった…。

ストーリーはともかく、戦闘シーンのすさまじさにショックを受けました。60年映画を見てきて、かなり残酷なシーンも見ましたが、今回は思わず手で目を覆ってしまうシーンもあり、ちょっとヒキました。それでも一見の価値はあると思います。

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最高の人生の見つけ方

おすぎ

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ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンがプライベートにも親しくつき合っているっていうのも小さな驚きでありますが、このふたりが共演する「最高の人生の見つけ方」の息のあった演技には感嘆してしまいます。

原題は「棺おけリスト」といって、ガンにかかって余命6ヶ月と宣告された自動車整備士のカーター(M.フリーマン)が、学生時代にある教授から教わった“棺おけリスト(死ぬまでにやりたいこと、見たいものなどをリストにする)”をベッドの上に置いていると同室の大金持ちのエドワード(J・ニコルソン)が声を掛けてきて、リストのことを質問します。初めは邪険にしていましたがリストのことを話すと、エドワードも余命6ヶ月で、金は腐るほどあるからリストの中味を実行に移そうと、ふたりで病院から飛び出すことに…。

スカイダイビングからピラミッドの頂上、世界最高級のレストランの食事からアフリカでのライオン狩りなどなど、とても贅沢で楽しさに溢れた旅を見せてくれます。ただし、その根底に流れている“余命何日”という哀しさがストーリーに厚味を持たせてくれます。脚本のうまさとロブ・ライナーの演出の巧みさで笑いながら、ちょっぴり切なくなりながらも、“人生”“家族”“愛”“死”を考えさせてくれる秀作であります。ジャック・ニコルソンの存在感に圧倒されます。

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■「最高の人生の見つけ方」劇場・作品情報はコチラ
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ミスト

おすぎ

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スティーヴン・キング+フランク・ダラボン、といったら「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」の2大感動作のコンビであります。ダラボンは自分が長編デビューをするならキングの、この小説、というものがあったといいます。それが「霧」という恐怖小説で、今回、それがやっと実現したことになります。

「ミスト」はダラボンの製作、監督、脚本3役の映画です。別荘地に住む、映画ポスター画家のデヴィッドは前夜の嵐で庭の大木が倒れ、仕事場が破壊されたので息子のビリーを連れて町のスーパーマーケットに買物に出掛けようとして、妻のスティファニーの指摘で湖の対岸に発生した霧を見て不安に思った。スーパーマーケットに着き、知人たちと昨夜の嵐の話をしたりしていた時、突然大きな揺れがきて、停電になる。気がつくと建物はスッポリと濃い霧に包まれていた。ショッピングに来ていた人々が不安気にガラスの向うを見ている中、中年男が突びこんで来て「霧の中に何かいるっ!!」と叫んだ。霧の中にいるものの正体は…。

スーパーマーケットに閉じ込められた人間たちはパニックの末、それぞれの本性を徐々に現わしてくる。キングの描く外にいる何者も怖いが、本当に怖いのは人間である、という部分が非常にうまく描かれていて、映画に引きこまれていきます。ただ、霧の中から襲いかかってくる“もの”の全体像がなかなか掴めないイライラとラスト15分のクライマックスのあとの不条理に不快を感じる人がいるかもしれません。

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スパイダーウィックの謎

おすぎ

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私は「ネバーランド」で初めて“フレディ・ハイモア”という子役を見た時、とても生きている少年という風に思えなかったのです。
ティム・バートン「チャーリーとチョコレート工場」を見た時、ああ、この子は現実の世の中より、どちらかというと“ファンタジーの世界”に住む子供なんだなあとふっと思ったものでした。リュック・ベッソンの実写とアニメを併合した「アーサーとミニモイの不思議な国」で、その気を一層、強くしました。「スパイダーウィックの謎」を見る前、なんの知識も情報も見ないで試写にのぞみ、F・ハイモアが2役を演じることを知り、なんとなく期待してしまったのです。妖精の世界の悪玉と戦う少年だ、というのでありますから…。“スパイダーウィック”とは人の名前で、ハイモア扮するサイモンとジャレッドの“大叔父、アーサー・スパイダーウィッグ”のこと。この双子の兄弟と姉のマロリー、母親のヘレンは、アーサーが80年前に建てた奇妙な屋敷に引っ越してきました。扉をあけて入った途端、信じられないことが次々を起こります。勝ち気で、冒険好きのサイモンは屋敷の中にある不思議な部屋で、アーサーが書き上げた一冊の本を見つけます。その“妖精大図鑑”には“警告”がつけられていて、開けてはいけない、と書かれていました。サイモンは、その封印を解いてしまいます…。さあここからはCGとVFXを駆使しての悪妖精と双子の兄弟と姉の連合軍との、華麗で、少し醜悪で、楽しい戦いが繰り拡げられていきます。まったくF・ハイモアはファンタジーの世界の住人だと判るのであります。大人も充分、楽しめるファンタジーの秀作です。

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ヒットマン

おすぎ

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「ヒットマン」なんてタイトルの映画はつまらないのにきまっている、と思って見て、これが意外な“ヒロイモノ”で楽しんで見てしまった。と言っても、誰にも彼にも「面白いから見なさい!!」と“オススメ”する映画では無いと思います。原作がヒット・アクション・ゲームですから銃撃戦、殺し屋同士のプロの緊迫感溢れた対決、武器密売組織との格闘、ラストのクライマックスでのバトル。主人公ヒットマンである“エージェント47”が繰り出す、流れるように華麗で、まるでバレエの振り付けを見るごとくの殺人技の数々は、CGもVFXも併用してのものですから想像出来ないことは無いけれど、そのスピード感といい、タイミングといい、今まで見た、この手の作品の中でも秀逸なもの、といっていいでしょう。それとスタイリッシュでエキサイティング(まあ、なんと使い古された修飾語でありますが…)なヴィジュアル。これが息つく間もなく連続で展開されると、一種の“目まい”を生じて、度々、ストーリーが見えなくなります(ここはどこ、私は誰状態に陥りますが、シンプルなストーリーなのですぐ立ち直ります。まあ、そこがいいとこね、なのです…)。では何故、良かったのか、というと“エージェント47”役のティモシー・オリファントがスキンヘッドで後頭部にバーコードのタトゥーを入れた異様なスタイルなのに、時に見せる悪戯っ子みたいな表情がチャーミングで見つづけてしまった、という理由。

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つぐない

おすぎ

つぐない

今年、いままでで見た映画の中で私の一番好きな作品が公開されます。ブッカー賞作家イアン・マキューアンの世界的ベストセラー“贖罪”をジョー・ライト「プライドと偏見」)監督が映画化した「つぐない」が、その映画です。

1935年、戦火が忍びよるイギリス。夏のある日、政府高官ジャック・タリスの屋敷で息子リーオンとその友人が休暇で帰ってくるのにあわせて晩餐会の準備がすすめられています。末娘のブライオニーは戯曲を書き、それを上演しようと屋敷にあずけられている叔母の子供たち、従姉妹のローラと双子の弟たちと練習している。上の姉のセシーリアは大学を卒業していたが何をするのでもなく毎日を過ごしていた。その日も窓の外を見ていたが、視線はタリス家の使用人の息子ロビーの姿だった。会食が始まる前にセシーリアとロビーは昼間起こった事で話し合うため図書室に入ったが、そこでふたりは愛を確かめあった。それを目撃したのがブライオニーだった。事件は、その夜に起こった。双子が行方不明になり、屋敷の人間が捜すうちに双子の姉のローラが何者かに犯されてしまったのだ。警察の調べにブライオニーは犯人を知っていると言い、ロビーを名指しする。少女がついた小さな嘘が姉と姉の恋人を引き離してしまう。

私は美しい映像で展開されるラブ・ストーリーをリラックス気味に見て楽しんでいた。映画は時が流れ戦争に突入。ロビーは戦場に行き、セシーリアは看護師になり、ブライオニーも見習いの看護師に…。そして時は流れ、1999年に…。年老いたブライオニーは大作家なっていた。そしてテレビのインタビューで衝撃的告白を…。このラスト近くで私は強烈な悲しみに襲われ、目から溢れる涙は止らず、ハンカチを噛んで嗚咽がもれないようにしました。初めての体験でした…。


クローバーフィールド/HAKAISHA

おすぎ

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ショッキングなポスター(首のもぎとられた自由の女神が手前にデザインされ、奥は炎上し、崩れおちているマンハッタンの摩天楼が描かれている)を目にして、絶対、見たいと思いました。ところが見たら、思ったのと違うのにビックリ!!。手持ちのビデオの映像が延々とつづきます。はじめのうち、何が起こっているか、皆目、見当がつかず、もしかして試写室を間違ってしまったのかと思ってしまいました(結局、映画のラスト近くでオープニングの映像が重要なものになってくるのでありますが…)。そのうちホームパーティーの模様が写し出され、いい加減、それにアキてきた頃、ドスーンとマンションが揺れ、室内灯が点滅します。パーティーの人間たちはマンションの屋上に昇ります。マンハッタンの幾つかのビルは停電しています。港ではタンカーがひっくり返ったという情報が流れ、何度目かの大きな揺れで皆が通りに出ると近くのビルが崩れ、大きな塊が飛んできて、道路に拡がります。何であろう、と見るとちぎれた自由の女神の頭部だった…。という具合に“HAKAISHA”によるニューヨークの破壊が展開されていきます。ただし、映像は手持ちのビデオが捉えた映像のみ…。

どっかで見たことがあるなぁと、気がついたのが「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の手法で、あれをグレードアップしたものでした。まあ、そこがユニークであり、物足りなさでもあります。見て損はしないが満足も半分。
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デッド・サイレンス

おすぎ

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ホラー映画大好き人間の私にとって「サイレント・ヒル」以来、胸をときめかすホラーに出会っていませんでした。それがウーンと唸ってしまうほど、懐かしくも情緒あるホラーを見て胸が踊ってしまいました。それも私が大嫌いな「ソウ」シリーズを作ったジェームズ・ワン監督と脚本家のリー・ワネルのコンビが作ったので、余計嬉しくなってしまったという“オマケ”もついた映画なのであります。タイトルは「デッド・サイレンス」。このホラーのアイテムは“腹話術の人形”。古いでしょう。懐かしいでしょう。スタッフは、昔々のユニバーサル映画のホラー映画へのオマージュでこの映画を撮ったみたいです。だから映画の頭に出るマークが'50年代のユニバーサルの地球の周りをプロペラ機がまわっているモノクロのもの、このオープニングから気に入ってしまいました。ある雨の夜、若い夫婦のもとに差出人不明のトランクが届きます。中にはビリーという名前の“腹話術の人形”が入ってました。夫がちょっとした買い物に出て戻ってくると妻は舌を抜かれてベッドの上で死んでいました。夫は、人形を見た時ある詩を口ずさんだ妻のことを思い出し、詩が読まれた夫の故郷レイブンズ・フェアに向います。果して、そこには何が待っていたのか?

とにかく“悪魔の手鞠唄”のように詩が謎を解く鍵に。そして、100体の人形が登場してくるクライマックス、衝撃のラストは思わず息を飲んでしまう嬉しさなのです。
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ノーカントリー

おすぎ

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今年の米アカデミー賞作品賞を受賞したコーエン兄弟の「ノー・カントリー」は今まで見たことの無いテクスチャーを持った映画であります。ストーリーは、偶然ハンティングの最中に、麻薬の取り引きらしい現場で何人かの人間が死んでいて、樹木の下で座った格好で息を止めていた男の傍らにトランクがあり、その中に200万ドルという大金が入っているのを見つけた、ベトナム帰りの男ルウェリン・モスが、そのトランクを猫糞(ねこばば)してしまう。その男をアントン・シガーという殺し屋が追うというもので、そのシンプルな筋に事件を追う保安官エド・トム・ベルが絡んでくる、という具合で今までもストーリーとしては無いことはないものなのです。しかし、殺し屋シガーが扱う武器が異様なもの(ホースの先から圧縮された空気が飛び出すエアガンのようなもので、常にボンベを持って行動する)で、大きなスクリーンを見ながらも、目はその武器に吸い寄せられてしまいます。勿論、追いつ、追われつのサスペンスは面白いのですが、殺し屋を演ずる“ハビエル・バルデム”の、これまた、異様な髪型と、殺し屋の何んという行動力に圧倒されてしまいます。映像はクリアーなのに、どこかシュールな面をもっていて、ラストまで息もつけずに見てしまいますが、これがアカデミー賞でオスカーを獲った、というと“品格”としてはどうかなあと、おすぎは思うのであります。

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魔法にかけられて

おすぎ

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ディズニー・クラシックを見て育った私にとって、この映画は、たまらなく懐かしいのと、御伽の国の住人というのがこんなにクッキリと描かれた映画に出会えて最高!! という気持なのであります。

「魔法にかけられて」はオープニングはアニメーションであります。夢と魔法の国“アンダレーシア”の森の奥に動物たちと住む美しい娘ジゼルは、巨人の怪物に襲われていたところをエドワード王子に助けられ、一目で恋におち、結婚へ。結婚式の当日、お城に行ったジゼルを待ちうけていたのは、王子の継母で女王、そして魔女のナリッサだった。“何でも願いが叶えられる井戸”に連れられていき「永遠の幸せなど無い所に行け!!」と言われながら井戸につき落されてしまうジゼル。ここまではアニメで、このあと井戸の底につき、マンホールの蓋を押しあげて外に出たら、そこはマンハッタンの中心“タイムズ・スクウェアー”の真っ只中だった。ここからは実写。愛の無い場所がニューヨークとは…。この街でジゼルを救ったのが離婚専門の弁護士ロバートと彼のひとり娘のモーガンだった。さてジゼルと王子の恋は…。御伽話の恋と現代の恋との違いを鮮やかに見せてくれるストーリーの美事さもあり、NYの弁護士のアパートが汚れているのでジゼルが窓を開けて歌を唄うとNYの鳩、鼠、ごきぶりがあつまってきて、掃除をしてくれる、なんて楽しいシーンもあります。魔女も王子も次々とNYに現われるのも嬉しい映画です。

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バンテージ・ポイント

おすぎ

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映画会社の廊下に張ってあったポスターを見て(ハリウッド・オリジナル)「これって何?」って聞いたら「おすぎさん、これから見る映画ですよ」と宣伝部の人に言われてしまって、まったく期待もしていなかったし、そんな映画があるなんて情報も無かったので知らなかった、のが、ものすごく面白かった、というのが「バンテージ・ポイント」でした。

“バンテージ・ポイント”は熟語で“(有利な)観点”という意味であります。スペインのサラマンカのマヨール広場で5大陸の首脳たちが対テロ戦争について話し合うイベントで、アメリカのアシュトン大統領がシークレットサービスのトーマス(デニス・クエイド)、ケント(マシュー・フォックス)に先導され、ステージに上り演説を始めようとした矢先、銃声が響き、大統領が倒れた。ステージに駆け上るトーマスの目にナップザックをテントの中に投げ込む人の影が…。「爆発するぞォ」と声を出したが遅く、一回目の爆発が、つづいて大きな爆発が起り、広場は修羅場へと化していく。この一連の動きを8つの視点(ポイント)から、それぞれの人物が体験した様を映画は繰り返し見せていく。リワインドという手法を使って観客は8回、登場人物の違う状態で狙撃現場を見ることに…。そして24分後、真相が明かされていく。

広場から市内へ、過激なカーチェイスあり、テロリストのドンデン返しあり、極上のクライマックスへ…。大興奮の面白さ。見なきゃ損。

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ペネロピ

おすぎ

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上流社会での名家、ウィルハーン家の5代前のラルク・ウィルハーンが使用人のクララに手を出し妊娠させ、その上、ポイと捨てて別の令嬢と結婚してしまう。それを怒ったクララの母は魔女となって「次に生れてくる娘は豚の鼻と耳を持った子であれ」と呪いをかけてしまう。その呪いを解くには、上流社会の“お仲間”の男が、その豚娘に永遠の愛を誓うことだと…。5代にわたってウィルハーン家は男の子ばかり生まれ、現代のジェシカが生んだのが娘だった。豚の鼻と耳を持って生れたペネロピ。家族の世間への壁は万全で、ペネロピは年頃になるまで一歩も外に出たことがなかった…。親はなんとしても呪いを解こうとするが…。上手にファンタジーと現代の歪んだ世相を反映させたストーリーを考え、美事に楽しくも可愛い映画を作ってくれました。

呪いを解くためといって、名家の息子たちと見合いを繰り返しても豚娘であることは封印させてきたのに、たったひとりのバカ息子に知られ世間にバレ…という風に決していい方向に向かわないのが、“女の自立”方面から話は別な角度に変ってくる。なかなかの腕前であります作り手たちは…。

ペネロピを初めて愛した男を演じるジェームズ・マカヴォイは注目株、成長株ですからツバをつけときましょう。ペネロピのクリスティーナ・リッチは豚の鼻の方がズーッとチャーミングという異色女優。私はとても好きな映画です。

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